タイに限らず、貿易において関税などの恩恵を受けることができるFTA(自由貿易)やEPA(経済連携協定)。こちらの記事ではタイにおけるそれらの締結国や、タイで事業展開する日本企業の活用事例などを解説します。

タイ国とFTA、EPAについて

タイのFTA締結国について列挙する前に、FTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)およびEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)について簡単に説明します。この二つは、自由貿易の為の協定となっており、FTAが「関税や貿易障壁の軽減・撤廃」を主とするのに対し、EPAはそれ以外の自由化も含む経済関係の強化を目的としています。

FTA、EPAについて

引用元:EPA活用マニュアル – ジェトロ

(https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/th/jtepa/pdf/jtepa-201712.pdf)

そもそも元々WTO(世界貿易機関)に加盟している国は、WTOが定めた協定税率にあわせた関税率で貿易をしなければならず、原則変更することが出来ません。

ですが個別に協定を結ぶことで双方によりメリットのある関税率に設定することや、WTOでは扱われない分野でのルール作りができるようになり、貿易の自由化や、海外進出のための環境整備や投資が促されるようになります。

WTO(世界貿易機関)とEPA

引用元:EPAで新たなビジネスチャンスを切り開く! – ジェトロ

(https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/wto-fta/pdf/EPAjirei.pdf)

特に日本のように資源や食料自給率の乏しい国においては、輸入先が増えることや、輸入コストが下がることでそれらの安定的な確保ができるようになるのは大きなメリットです。

また、経済的な関係の深さは、そのまま政治的な関係への強化にも繋がります。そうして世界各国で協定が結ばれていくことで、国際経済の活性化へと繋がっていくのです。

FTAやEPAは特定の国と国の間、あるいは地域と結ぶことができ、例えばタイと日本の場合、

  • タイと日本でのFTA(2007年11月発効)
  • ASEANと日本でのEPA(2008年12月発効)

と複数の協定が締結、発効されています。これらに優先度はなく、まったく別個の協定となっているため、輸入者はそれぞれの協定においてよりメリットのある方で申告することができます。

タイ国におけるFTA、EPAについて

先述したように、タイは日本とのFTAやASEANとの協定がありますが、その他にも以下の国とのFTAやEPAを締結しています。

ASEANにおけるFTA

引用元:ASEAN情報マップ
(https://www.asean.or.jp/ja/wp-content/uploads/sites/2/2015/06/0efdf6d22613a577d3ac5c2ac5d3d07c.pdf)

  • インド(TIFTA:2004年9月および2012年4月発効)
    ※ただし、サービス貿易や投資なども含む本FTAについては交渉中
  • オーストラリア、ニュージーランド(TAFTA:2005年7月発効)
  • 日本(JTEPA:2008年12月発効)
  • ペルー(TPCEP:2011年11月発効)
  • チリ(TCFTA:2015年11月発効)

また、タイは2022年1月現在、カナダと対話中(構想段階)、パキスタン、スリランカ、EU、トルコ、バーレーンとの交渉を進めており、東南アジア諸国の中でもFTAへの積極的な姿勢がうかがえます。

また、ASEAN加盟国のタイとしてのFTA・EPA締結国・地域は以下の通りとなります。

  • 中国(ACFTA:2005年7月発効)
  • 日本(AJCEP:2008年12月発効)
  • 韓国(AKFTA:2007年6月発効 ※タイは2010年1月に発効)
  • インド(AIFTA:2010年1月発効)
  • オーストラリア(AANZFTA:2010年1月発効)
  • ニュージーランド(TNZCEP:2010年1月発効)
  • 香港(AHKFTA:2019年6月発効)
  • 日中韓(RCEP:2022年1月~2月にかけて順次発効)

その他、2022年1月現在、カナダと対話中(構想段階)となっています。尚、ASEAN国内についてはATIGA(ASEAN物品貿易協定)で発効されています。

タイ国のFTA・EPAを利用した輸出額および利用率

タイ商業省の発表によると、2020年のタイ国内でのFTAを利用した輸出額は580億7,700万ドルで、FTAを用いて輸出できる総額の76%が利用されました。全ての協定が利用された上での国別利用額トップ5およびその利用率(四捨五入で表記)は、ASEAN(193億3,700万ドル、63%)、中国(189億5,600万ドル、89%)、オーストラリア(69億8,700万ドル、95%)、日本(64億9,500万ドル、85%)、インド(33億700万ドル、75%)の順になっています。2020年は新型コロナウイルスの影響でタイの輸出は全体的に減少傾向となっていますが、中国は5%ほど増加しています。

日本企業のタイEPA活用事例

日タイEPAを利用する日本企業は多く、主に関税の削減において恩恵を受けています。以下にジェトロビジネス短信の特集より一例を紹介します。

  • 輸出の際主力製品に課される関税が30%から無税になり、大幅な関税削減が実現した
  • 主力製品の購入者(輸入者)が5~8%の関税削減を得られた。結果、海外の販売代理店からユーザーへの販売価格の引き下げが可能となり、現地市場における価格競争力が上がった

更に、関税関連以外では以下のような事例も報告されています。

  • 外資出資比率は50%未満に規制されている一部のサービス業がEPAにより緩和されたことで、その事業に参入することができた

また、輸入国側でEPA税率の適用を受ける際に必要な「特定原産地証明書」の発行は日タイEPAを利用する件数が多く、積極的に利用されているのが分かります。

EPAの概要と原産地規則

引用元:EPAの概要と原産地規則 – 経済産業省

(https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/download/gensanchi/eparo.pdf)

タイ国でのFTAやEPAを活用するために

タイのFTAやEPA締結国などについて説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

海外展開の後押しとなる協定ではありますが、その適用までには複雑な規約を理解しなければなりません。事実、日タイEPAを初めて利用した企業によると、『書類作成の際の記載ルールの確認やHSコード(輸出する産品の関税番号)の特定などが難航した』『商品ごとに原産品の判定を受けなければならず想定以上に手続きが複雑だった』など、苦労している様子も伺えます。

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