親日が多いタイへ、日本企業がビジネス参入するメリット・デメリット
少子高齢化や長期的なデフレ等により日本市場の縮小が続くなか、国内市場の限界を感じている企業も増えているようです。その様な中、自社の事業拡大のために海外市場への進出を考えている企業もあることでしょう。
東南アジアは人口増加・経済成長中の地域であり、市場拡大を狙いやすいと言われますが、その中でもタイは日本企業へのイメージが良い「親日の国」であるため、参入後も現地の人たちに受け入れられやすいと言われます。
こちらの記事では、タイが親日である理由と、タイ進出のメリット・デメリットをご紹介します。
なぜタイは親日なのか?その理由を解説
出典:【世界10カ国の親日度調査】日本への好感度、日本旅行前の情報収集について
https://www.auncon.co.jp/corporate/2021/0427.html
2020年に「日本は好きですか?」というアンケート調査では、タイ人の多くが「大好き」「好き」と答えています。
しかし、タイよりも日本に地理的に近く、歴史的にも関りが深い韓国・中国では、嫌い、大嫌いという回答が多くなっています。なぜこのような結果になるのかを解説していきます。
タイと日本の交流の歴史
タイと日本は、飛行機で5〜6時間の距離ですが、両国間に歴史的に大きな争いはありません。また、日本の皇室とタイの王室が仲がいいことも知られています。
両国の親交が始まったのは600年前と言われ、その後、1887年の「日暹(にちせん)修好と通商に関する宣言」という条約を締結させ、明治政府が初めてタイとの交流を始めました。日本が初めて東南アジアの国と外交を結んだのはタイでした。世界大戦などによる紆余曲折はありましたが、タイは日本に対して悪いイメージを持っていません。
タイの親日度(タイで人気の日本文化)
新型コロナウイルスが蔓延する前は、年間130万人以上のタイ人が日本を訪れていました。
- 漫画
- アニメ
- 日本食
これら3つは、特にタイ人に人気の日本文化です。
日本の漫画、アニメ作品の多くがタイ語にされ、タイでも多く販売されています。「鬼滅の刃」は、タイでも社会現象になるほど人気の作品になりました。その他にも、日本のライトノベルを漫画化したタイトルなども人気です。
タイの食文化は日本とは異なりますが、寿司、ラーメンなどはタイでも人気で、日本のラーメン企業がタイに出店後、独自にタイラーメンを開発し、新たな「ラーメン」として楽しまれています。
日本食レストランのタイ進出
タイでは、日本食は好んで食べられ、「日本食ブーム」とも言われています。元来、タイには生魚を食べる習慣はありませんでしたが、和食や寿司が人気になったことから、生魚を食べるようになってきました。ラーメン、緑茶なども人気ですが、日本食を真似したレストランが増えるほど、新たな食文化として根付いています。
日本の飲食店も多くタイに出店しており、首都バンコクでは日本で有名なチェーン店を多く見かけます。以下が日本のチェーン店の例です(年は開業年)。
- 1983年 フジ・レストラン
- 1992年 8番らーめん
- 2005年 大戸屋
- 2006年 モスバーガー
- 2006年 やよい軒
- 2007年 ペッパーランチ
- 2008年 CoCo壱
- 2008年 とんかつさぼてん
- 2011年 吉野家
- 2014年 ポムの樹
大戸屋のような和定食専門のチェーン店も、タイに出店し約20年が経過しようとしています。これは日本食がタイで受け入れられ、好まれていることの象徴とも言えるでしょう。
日本企業がタイへビジネス参入するメリット・デメリット
メリット①立地の良さ ~タイが市場の拠点になる~
出典:タイという国 - 日タイ修好130周年
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol154/index.html
タイは、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどとも地続きで、その中心に立地しており、貿易が非常に盛んな国です。タイ、ベトナム、カンボジアを繋ぐ南部経済回廊が作られてから、タイから他諸国への物流環境がよくなっています。また、バンコクの空港からはアフリカやヨーロッパへの便が多く出ているため、空路でもタイが拠点となります。
つまり、タイに進出することで、タイでの市場拡大だけでなく、タイを拠点として他の東南アジアやアフリカ、ヨーロッパへの市場拡大まで狙うことが出来ます。
メリット②多くの日本企業が進出
出典:海外進出日系企業拠点数調査
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html
2020年のJETROの調査によると、日本企業5,658社がタイで活動していることがわかっています。内、大企業2,479社、中小企業2,021社、個人*も711社がタイ進出を実現しており、ビジネスの幅を広げています。製造業や卸売業・小売業の割合が多いものの、2020年から不動産業の割合が増えています。
*株主が法人を含まず個人のみで構成されている企業のこと
メリット③安価な事業コスト
首都であるバンコクは、地価・人件費共に高くなっていますが、それでも、バンコクから離れるとかなり安価になります。タイの人件費は日本の約4分の1程度です。バンコクから200kmほど離れた場所であれば、地価は平米あたり1,600バーツ(4,480円)程度です。工場を作るとしても事業コストはかなり押さえられるでしょう。
日本では高コストになりやすい事業であっても、タイで事業展開すれば、コストを押さえることで利益を出すことができる可能性があります。
メリット④タイ政府の投資奨励
BOI(タイ投資員会)という政府機関があり、海外からの投資振興を行っています。外国企業に対し、投資奨励という特典を与え、外国企業によるタイへの直接投資を後押ししています。
BOIの特典
・100%外資での進出が可能になる
・就労ビザが取得しやすくなる
・最大8年間法人税が免除になる
・事業をする際に土地の所有を認められる
タイでは、日本の製造業を中心とする多くの企業がBOI認定を受け、外資系企業として参入して居ます。
デメリット①タイでも進む少子高齢化
東南アジア諸国は、ビジネスチャンスが大きいとされていますが、タイも少子高齢化が進みつつあります。現在タイの平均寿命は74歳で医療機関も日本とほぼ変わらないレベルにまでなっています。タイでも、晩婚化・出生率の低下などが、日本ほどではありませんが進んできています。そのため、長期的に見た場合、デメリットになる可能性があります。
デメリット②政治的な事情
タイ国民の多くは王室に敬意を示しており、2016年10月にプミポン国王(ラーマ9世)が崩御した際、国中が喪に服した事は有名です。実際、国全体が自粛モードに突入し、労働意欲、購買意欲が低下したため日本企業もダメージを受けたと言われています。王室の状況や政治的問題によって購買行動が影響をうける可能性があると言えるでしょう。
デメリット③所得格差とマーケティング
首都バンコクとそれ以外の地域の間には、すでに所得格差が生まれていると言われています。そのため、タイ全土を均一なマーケットと考えることは難しく、「日本企業のものは精度は高いが、高級品」という印象もあるようです。そういった格差のあるなか、バンコクでは物価の高騰が進んでいるため、タイ国内でのマーケティングが複雑化する、というデメリットがあるかもしれません。
IDGへご相談ください
タイへの進出には、メリット、デメリットがありますが、まだまだビジネスのチャンスが多く存在します。しかし、いざ進出するとなると、莫大なお金と複雑な手続きが必要となり、リスクも考慮しなければならないでしょう。そのため、進出を考える際には、まず、現地の情報をしっかりと収集することが必要となります。
その様な時には、IDGへご相談ください。IDGは、ビジネス、知的財産、特許、法律、マーケティング、技術分野等の専門家がおり、タイへの進出をサポートしています。リスクを減らし、タイでのビジネスチャンスを広げるために、まずは無料相談をご利用ください。