この記事は前回からの記事の続きです。まだ読んでいない場合は、下記よりお読みください。

 

タイの食材輸入実績

コロナ禍以前のインバウンド景気に沸いていた2019年のことは、記憶に新しいところでしょう。

当時は中国から日本を訪れる人たちのことが、メディアで毎日のように報じられていました。事実2019年の中国からの訪日客数は、国別第1位だったのです。当時の訪日客数順位と、コロナ禍以降の2020年・2021年における日本からの農林水産物や食品の輸入総額順位を表にしました。

順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位
2019年の国別および地域別訪日客 数 中国 韓国 台湾 香港 アメリカ タイ オースト ラリア
2020年の農林水産物・食品の輸出 総額 香港 中国 アメリカ 台湾 ベトナム 韓国 タイ
2021年の農林水産物・食品の輸出 総額 香港 中国 アメリカ 台湾 韓国 ベトナム タイ

国も順位もほとんど変わらず、タイが漏れなくランクインしています。

コロナ感染が世界中で拡大する以前には、タイから日本への観光旅行が人気でした。1度だけでは済まず、何度も日本を訪れる人たちも少なくなかったのです。

当時の大きな訪日目的の1つとして、日本食を食べることでした。渡航制限が長引いたことから、日本食を切望する声がタイでは日増しに大きくなっているかもしれません。

常夏のタイでも焼き芋ブーム

それを如実に表しているのが、タイの焼き芋ブームです。タイが日本から輸入するサツマイモの総額は、16年から、コロナ禍真っただ中の2020年までの5年間で、約5倍にもなっています。

日本では焼き芋を冬の食べ物と思い込みがちです。そのため温暖な地域で、焼き芋は売れないことが当初は予想されていました。

ところが、この固定観念を覆したのが、“ドン・キホーテ”を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスでした。

同社は、タイのみならず、シンガポールや香港でも、運営する“Don Don Donki(ドンドンドンキ)”の店先に焼き芋機を置きました。するとそのねっとり感やスイーツにも劣らない甘さとおいしさに、タイをはじめとしたアジアの人たちは魅了されたのでした。熱帯地域でもある東南アジアの人たちが、ほくほくの焼き芋を求めて行列をつくったのです。

日本経済の発展に貢献することを目指して、2003年に設立された独立行政法人がジェトロ(JETRO・日本貿易振興機構)です。ジェトロ・バンコク事務所も、販売促進キャンペーンを始めました。

さらなる日本からのサツマイモ輸入量増加が、期待されています。

ちなみにタイでは同じ5年間で、日本からのイチゴ輸入額も5倍に増えました。また、もともと日本の青果物で、タイが最も多く輸入していたのはリンゴです。サツマイモに加え、イチゴやリンゴなどの日本で採れた青果物の輸入量を増やすことをジェトロ・バンコク事務所は考えています。

地元の小売店など、有する限りのルートを通じて、日本の青果物のおいしさや安全性をPRしているのです。

 

水産物輸入も積極的

タイが熱心に日本から輸入しているのは、青果物だけではなく水産物も同様です。

中でも2020年に、かつお・まぐろ類を世界中で最も多く日本から輸入したのはタイでした。2位以下には、ベトナム・香港・中国・インドネシアと続きます。さばも多く、2020年の輸入実績でベトナムに次ぐ第2位です。ぶりも2020年実績では、5位につけています。

タイの輸入関税はEPAにより撤廃や削減

日本からタイへの輸出ビジネスを行う上で、かつてハードルとなったのが輸入関税の高さでした。国が関税をかけずに自国へ輸入を行ってしまうと、海外の品物の方が安価であった場合、それが国内で流通することで国内産業にダメージを与えてしまうことになります。

タイの輸入関税は、日タイ経済連携協定(EPA)が2007年11月1日に発効したことにより、多くの品目で撤廃や削減が行われました。この協定による日本側のメリットは大きく、追い風となっています。

威力抜群の日本ブランド

日本からの輸入品が、タイのみならず世界中で認知されているのには理由があります。日本産、あるいは、日本製のいわゆる日本ブランドの輸入品が安心・安全・高品質であるからこそなのです。

焼き芋ブームに沸くバンコク中心部のショッピングモールでは、安納芋や紅はるかなど、日本でも知られる品種の日本産サツマイモがたくさん売られています。日本人生産者の写真が添えられているのは、サツマイモが日本産であることを証明するためでしょう。その脇に設置された焼き芋機で焼かれた焼き芋が、2本単位などで販売されています。

さらに、日本円で1,000円ほどの価格が、その焼き芋につけられているのには驚かされます。それでもどんどん売れていくのは、「日本産」というだけで高品質であることをタイのお客さんが確信しているからです。

この焼き芋ブームに便乗するかのように、日本で有名な品種の中国産サツマイモが、タイのスーパーなどで販売されていることもあります。

しかし、その売り場では、日本人生産者の写真など、日本産であることを示すものは1つも見当たりません。横に積まれた箱には、日本の有名なサツマイモ品種名に加えて、“Product of China”などと書かれています。価格も“1,000円/2kg(日本円にして)”といった具合で、比較にならないほど安価なのです。

これはタイ当局による規制が、きちんと機能している証拠と言えるでしょう。

ブランド保護の取り組み-日本

日本で行われるブランド保護対策の1つに、地域団体商標の制度導入があります。ブランド“紀州みなべの南高梅”は、地域団体商標です。そして、地域団体商標は知的財産の1つです。

JAグループは、この地域団体商標の登録・出願数を増やすことに積極的です。なぜなら、ある農産物を知的財産とできれば、販路拡大や有利な販売を展開できるようになるからです。

ブランド保護の取り組み-タイ

中国などで日本のブランドが、勝手に商標出願されたという報道を見聞きしたことはないでしょうか。タイでの知的財産への対応が、どんなものかも心配になるかと思います。

タイの税関は、タイ王国の財務省下に置かれています。そして、著作権法や商標法に基づき、輸出入時には模倣品などの取り締まりが行われています。知的財産権の侵害抑制措置も行われます。

タイ国内でも、タイ警察中央捜査局の下に設置されているECD(タイ経済警察)が、知的財産の保護に動きます。知的財産権の保持者から知的財産権侵害の訴えがあると、差し押さえなどの行動に及びます。

なお、日本国内でだけ商標登録しても、その商標権は日本国内でしか有効にはなりません。タイでも商標権を獲得するためには、商標登録をタイでも行ってください。

 

タイの食品安全規制

自国民を守るため、海外から輸入される貨物を、空港や海などの水際において法律により規制しています。

それはタイも日本と同様です。風俗・公安の観点からだけではなく、衛生や保健の観点からも規制を受けます。規制は年々強められる傾向にあり、2021年1月26日には既存食品法改正案の閣議決定が行われました。

日本とタイの食品安全規制を比較すると、完全に同一とまでは言えません。日本では認められるものが、タイでは認められないこともありえます。

輸入認可を行うタイ政府担当官の判断が、担当官により異なることもあるようです。これらのことを考慮の上、タイへ進出する前には念入りな調査と対策の検討が必要です。

タイの法規制や商習慣

タイでビジネスを実際に始めてみると、日本とは異なる法規制や商習慣に戸惑う人がほとんどです。タイビジネスに順応できるようになるまでには、それなりの努力が必要であることが、そのときになって初めて分かるのです。

例えば、日本ならニックネームを使うのは、プライベートの場面に限られるのが常識でしょう。ところが、タイではビジネスの現場でも、ニックネームが当たり前のように使われます。それも、同僚に対してだけではありません。自身の上司や取引先の方にまで、ニックネームを使って呼ぶのには、驚く日本のビジネスマンも少なくないのです。

また、タイでの輸入業務を行うことができるのは、タイに法人格があり、輸入業務ライセンスを持つ企業だけです。

また、タイ資本の小売大手企業がサプライヤーに棚代(20~30%)を求めないのは、間違いなく売れることが予想される商品だけです。そして、もし売れ残った場合には、負担するのはサプライヤー側です。卸業者と輸入業者が同じであることが多い点についても、事前に知っておいた方がいいでしょう。

タイの調査ならIDGへお問い合わせください

タイで輸入ビジネスを始めるには、タイ独自の情報を集めた上で、完璧な計画を立てなければなりません。それなくしての成功はありえません。

IDGは、タイおよびASEAN加盟国でのビジネスに精通したスペシャリスト集団です。正確なデータを元に、提案とサポートを行います。

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