なぜタイ市場調査が必要なのか?
市場調査を正しく行うことで、タイに進出するにはどのような道があり、どの道を行くのがベストなのかが明らかになります。
本稿を読めば、タイ市場調査の定石と手順がわかります。
タイ市場調査とSNS
TwitterやFacebookにはタイの情報があふれており、市場のナマの声が無料で手に入ります。
プロのマーケターにも、回答者が身構えてしまうアンケート調査より、消費者の本音が聞けるSNSを重視する人が多くいます。
あなたがタイ語に堪能で、タイ人の書き込みを100%理解できればいいのですが、日本人や日本語メディアが発するタイ情報を安易に鵜呑みにすると、足元をすくわれることになります。
在タイ日本人は「10万人」しかいませんが、タイ人は「6,600万人」もおり、日本人と同等以上の生活水準のタイ人だけでも「1,000万人以上」いるのですから‥‥
フリーペーパーや日本人コンサルタントを含めて、日本語メディアのタイ情報には過度にまどわされず、「信じて信ぜず」の距離感をたもつことが重要となります。
タイ市場調査の手順
それでは、「ハムを主力とする中堅食品メーカーのタイ進出」を例として、タイ市場調査の手順を見ていきましょう。
PEST分析
まず、PEST分析でタイのマクロ環境をおさえます。
「 PEST ⇒ 5F ⇒ 3C ⇒ 4P 」の市場調査の定石は、タイにおいても変わりません。
PEST
- 【P】olitics(政治)
- 【E】conomy(経済)
- 【S】ociety(社会)
- 【T】echnology(技術)
Politics(政治)
タイの法規制や税制も含まれる、市場調査の出発点です。
ハム業界であれば、FDA(タイ食品医薬品局)による添加物や衛生基準に関する法令が該当します。
Economy(経済)
タイでは、都市部に住むミドル~アッパーミドルクラスの所得向上と旺盛な消費意欲が見逃せません。
Society(社会)
タイ人は宗教上の理由で牛肉をあまり食べず、代わりに豚肉を多く消費します。東南アジアに多い中国系住民は人口の15%ほどで、食文化に大きな影響を与えています。極端に甘い物好きの国民性も、文化的に特筆すべき事項です。
Technology(技術)
殺生を忌避する仏教国のタイでは、培養肉や植物肉の開発がすでに進んでいます。
5フォース分析
次に、5フォース分析で「タイのハム業界」における競争要因を明らかにします。
5フォース
- 業界内の競争
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 新規参入者の脅威
- 代替品の脅威
業界内の競争【中】
最大手のC財閥がすでに参入していますが、直接競合しそうなローカルのハムメーカーはまだいない模様です。
買い手の交渉力【小】
自社のハム製法に独自性があれば、買い叩かれなくてすみそうです。
売り手の交渉力【小】
タイには畜産業者が多く、安価で良質な豚肉のサプライヤーを探すことができそうです。
新規参入者の脅威【中】
タイ進出をうかがっている日系のハムメーカーは他にもあり、将来的に競合する可能性がありそうです。
代替品の脅威【大】
培養肉や植物肉が実用化すれば、ちゃぶ台返し(ゲームチェンジ)が起きるおそれがあります。
【結論】
「タイのハム業界」は、現時点では魅力的な市場といえそうです。競合に先んじて進出し、優良な買い手を囲い込むことがKSF(主要成功要因)となりそうです。
3C分析
さらに、3C分析で自社の課題を洗い出します。
3C
- 【C】ustomer(顧客)
- 【C】ompetitor(競合)
- 【C】ompany(自社)
Customer(顧客)
顧客は大きく、レストラン業者と家庭に分けられます。
タイでは家庭で料理をする人は非常に少なく、都市部に住む人も朝夕は屋台やコンビニですませる人が多いです。
Competitor(競合)
競合は大きく、ローカルと日系と欧米系に分けられます。
タイ人の味覚により強く訴えるハムを、リーズナブルな価格で提供できた者が勝利を手にします。
Company(自社)
あなたの会社です。自社の強みと弱みが見えていますか?
また、タイ進出に必要な人材は社内にいますか?
Competitor(競合)を細分化し、次の4P分析につなげます。
4P分析
最後に、4P分析で「タイで効率的にハムを売る」ための具体的な戦略を策定します。
4P
- 【P】roduct(商品)
- 【P】rice(価格)
- 【P】lace(流通)
- 【P】romotion(販促)
タイでは『M社』というレストランチェーンが業界最大手で、国内に400店舗以上あります。
近年、高級路線の姉妹ブランドも展開し、日本にも支店を出しているので、仮にM社に「タイスキ用のハム」を売り込む場合を考えてみましょう。
Product(商品)
タイスキは、タイ風にローカライズされた火鍋で、日本のしゃぶしゃぶや寄せ鍋に近い料理です。
日本の「ハム鍋」用のハムを、タイ人の好みに合わせてハチミツで甘みを増し、中華ハム風に仕上げて提供するなどの工夫が考えられます。
Price(価格)
M社のスケールメリットを活かし、価格は低めに設定します。
Place(流通)
タイ全土のM社がチャネルとなります。
全国で新しくできるショッピングモールには、必ずと言っていいほど、M社もセットで出店されます。
Promotion(販促)
プロモーションはすべてM社におまかせします。
M社の金看板がキラキラと輝いてきます。「フランチャイズは信じて信ぜず」・・・現地のブランドに頼りきりでは自社の成長はおぼつきませんが、まったく頼らないのも苦しいものです。
その他、タイ人のSNSを見ると、
- 「コンビニのサンドイッチは、ハムがまずい」
- 「バインミーは、焼き豚風のハムが合いそう」
- 「回転寿司の寿司ネタは、ハムの肉質が残念」
といった声が拾えます。
特にコンビニのサンドイッチは、コンビニというチャネルのパイが大きいので有望です。
果敢に売り込んでみましょう。
あるいは、タイのスーパーに行くと、恩師や恩人への贈答用のバスケットをよく見かけます。
中身はサプリメントがほとんどで、レパートリーはきわめて限定的です。
日本ではおなじみの「お歳暮用ハム」を文化輸出することができれば、真空パックで日持ちもするので喜ばれるかもしれません。
現地情報は現地・現物・現人で
現地情報は必ず「現地」「現物」「現人」で取得する必要があります。
「現地」は多様です。
『タイの食肉業界』では粒度が粗すぎるので、『タイのハム業界』で深掘りした調査を実施します。
また、「現地」は常に変化します。
情報は常にアップデートしなければなりません。
Google検索では、市場調査として不十分なゆえんです。
Googleを生んだアメリカ人は、Googleの限界もよく知っており、市場調査には日本企業の10倍も費用をかけるといいます。
正しい市場調査は、企業の健全な成長の秘訣なのです。
餅は餅屋のタイ市場調査
IDGは、SNSからタイ人のナマの声を直接拾い上げることができます。そして、現地情報だけでなく、特許や商標登録など守りの経営も強いのも特徴です。
自社技術である「ハムの製法だけ盗まれてしまう」といった悲劇を未然にガードします。貴社の業界にフォーカスした、オーダーメイドかつ一気通貫の進出サポートが可能です。
まずはご相談だけでも歓迎致しますので、お気軽にお問い合わせください。