タイで起業するには?
実はタイは、2世・3世の起業家が起業するのに最適な国です。
タイで会社を設立し、日本の家業をタイで数倍の規模に広げた方は少なくありません。家業とは直接関係のない、関連分野で大成功を収めた方もいます。
たとえば、車部品メーカーの2代目が、タイでサプライヤー向けの物流会社を興したようなケースがあります。あるいは、家業の製造業とはまったく無関係なフードビジネスをタイで興して成功された方も多いです。
タイで起業する人のロールモデルには事欠きません。
タイでの会社設立は、法的手続き自体は比較的容易ですが、事前に決めておくべき事項は多岐に渡ります。
会社名の決定ひとつとっても、一筋縄ではいきません。
十分な準備を行わず、行き当たりばったりで進めると、設立のための法的手続きや設立後の事業運営で行き詰ることになるでしょう。
会社の定款記載事項は、株主総会の特別決議が必要なため、熟慮のうえ決定しないと後悔することもございます。
この記事では「タイで起業するのに必要な10個のステップ」について、タスク形式でご紹介します。
※非公開株式のLimited Companyを想定しています。
ステップ0:設立準備
進出支援会社の決定
外部のコンサルタントから指南を受けるか、社内の人材による主導で進めるかを決定します。依頼先または担当者も同時に決定します。タイでの会社設立の出発点です。
- 規制調査
進出する業種のタイにおける法規制を調べます。- 外国人事業法
- 外国人職業規制法
- 外国為替管理法
- 関税法
- 市場調査
進出する業界のタイにおける市場とトレンドを調べます。- 市場規模
- トレンド
- 最新ニュース
- BOI認証可否の確認
BOI(Board of Investment)とは、特定業種における外国資本への優遇措置のことです。車部品メーカーを含めた製造会社であれば、ほぼ確実に認証を受けられますが、タイ国投資委員会への事前の確認が必要です。同様の優遇措置にタイ工業団地公社によるIEAT(Industrial Estate Authority of Thailand)があるので、あわせて確認します。- BOI
- IEAT
- 進出計画の策定
資金繰りから撤退条件までを含めた事業計画を策定します。- ビジネスモデル
- 製品ラインナップ
- 販売経路
- 資金繰り表
- 撤退条件
これらの調査と計画が不十分だと、設立後の事業運営で支障をきたすこと必至となります。つまずきポイント①【事前調査】です。これらは外部のコンサルタントを利用することもできます。
- 株主の人選
非BOI会社では、タイ人株主の出資比率を51%以上にする必要があります。後々、トラブルになりやすく、最悪の場合せっかく育てた会社をタイ人に乗っ取られることになります。つまずきポイント②【タイ人株主】です。外部のコンサルタントを利用すれば、信頼できるタイ人株主を責任をもって紹介してもらうことができます。
- 取締役の人選
取締役は、株主とは異なり、国籍の制限はありません。一人(いちにん)取締役も認められています。
- 署名権限を有する取締役の人選
署名権限を有する取締役(Representative Director)は日本の会社の代表取締役にあたります。取締役と同様、国籍制限はありません。通常はあなたが就任します。
タイでは多くの書類に署名権限を有する取締役の自筆のサインが必要で、当然ながら記名捺印は通用しません。迅速な取引を進めるには、タイ常駐の「署名権限を有する取締役」が必須となります。あなたがタイに常駐できない場合、あなた以外にもうひとり「署名権限を有する取締役」が必要となるということです。つまずきポイント③【署名権限を有する取締役】です。
- 通訳兼秘書の人選
タイ人秘書(兼通訳)は、会社設立後に「従業員ナンバー0001」になる重要な人材です。立ち上げの成否は、彼/彼女の能力にかかっているといっても過言ではありません。つまずきポイント④【タイ人秘書】です。外部のコンサルタントを利用すれば、能力の高い信頼できるタイ人秘書を責任をもって紹介してもらうことができます。
- 本社オフィスの選定
タイ人秘書と一緒にさがすことになります。シェアオフィスは、基本的にはOKですが、まれにトラブルになることもあるので、予算が許すかぎり避けた方が無難です。つまずきポイント⑤【シェアオフィス】です。
- 会社名の用意
日本では、不正の目的がない限り、既存の会社名と同一・類似の会社名の登記が可能ですが、タイでは不正の目的がなくても、同一・類似の会社名は登記することができません。
また、日本では商号自由の原則により、自由な会社名の命名が許されていますが、タイでは会社の事業内容にふさわしくない会社名の命名は許されません。「School」「Associate」「Institute」など、公的な機関を連想させる会社名は、却下される公算が高いです。会社名候補は5つ以上用意しておいた方がよいでしょう。つまずきポイント⑥【会社名の制限】です。
ステップ1:会社名の予約
タイに会社を設立するうえで、最初の法的手続きとなるのが、会社名のオンライン予約です。タイ語表記と英語表記の両方の予約が必要となります。「タイ語⇒英語表記」「英語⇒タイ語表記」の変換は、訳者により表記の揺れがあるのでご注意ください。
たとえば、同じ「y」に当たるタイ文字の子音でも、「ย=男性的」「ญ=女性的」のイメージのちがいがあります。とくにグループ会社を設立する際には、表記の統一を図る必要があります。つまずきポイント⑦【会社名の表記の揺れ】です。
<設立準備>
- 資本金の国際送金
会社名の予約と併行して、資本金となる資金を日本からタイに送金します。日本と同様、最低資本金の定めはありませんが、日本人従業員を雇用するには、1人当たり200万バーツの資本金が必要となります。資金はタイ人名義の口座に送金する必要があります。つまずきポイント⑧【資本金の国際送金】です。
- 従業員の募集
開業時期にあわせて、従業員の募集を行います。開業時のメンバーとなる重要な人材です。昨今のタイでは人手不足で、特に製造スタッフの募集には苦労することもあります。つまずきポイント⑨【従業員の募集】です。これも外部のコンサルタントから紹介を受けることができます。
- 基本定款の作成
基本定款で最も重要となるのが、会社目的です。日本と同様、会社は原則として、会社目的に関連する行為しか法律効果が生じません。よって、会社目的は、定款に網羅的に記載しておかないと、取引相手から契約の無効を主張される原因となります。つまずきポイント⑩【会社目的の記載】です。業種ごとにカスタマイズされ、会社目的が網羅的に記載された定款のひな型は、コンサルタント等から入手することができます。
ステップ2:基本定款の登記
基本定款をオンライン登記します。
ステップ3:創立総会
会社名が決まり、基本定款の登記が完了すると、発起人は創立総会を開催しなければなりません。創立総会では、株式引受人により、下記の事項が議決されます。
- 株式引受人の承認
- 付属定款の承認
- 発起人の設立準備行為の承認
- 株式の種類および払込額の決定
- 取締役の任命とその権限の決定
- 会計監査人の任命
<設立準備>
- 会計事務所の決定
タイでは、会社の規模を問わず、公認会計士(CPA)監査が義務付けられています。タイ進出支援会社が社内にタイ国CPAを擁していることもあり、この場合、設立後の会計監査および会計分野を含めたコンサルティング業務全般、記帳代行までを一括して依頼することができます。
会計事務所(進出支援会社)は、得意とする分野や費用面の幅が広いので、慎重な検討が必要です。つまずきポイント11【会計事務所の決定】です。
ステップ4:資本金の振込
会社設立登記時には、資本金払込に関する「銀行残高証明書」の提出が必要です。
ステップ5:設立登記
設立登記をオンラインで行います。
ステップ6:納税番号&VAT登録
納税番号の取得および付加価値税(VAT)の登録を行うことで、会社の設立手続きは完了し、晴れて事業活動を開始することができます。
納税番号が付与されると、『DBD』(Department of Business Development)のデータベース(タイ語/英語)にあなたの会社の企業情報が登録されます。
タイでは、小規模な非公開会社を含めて、すべての会社の貸借対照表および損益計算書が一般公開されます。
https://datawarehouse.dbd.go.th
試しに、あなたの会社の納税番号で検索してみて下さい。
なお、納税番号は「会社ID」や「Registered No.」とも呼ばれる、あなたの会社の背番号です。
ステップ7:営業開始
ステップ8:労働許可書の申請
ステップ9:労働許可書の発給
会社の実態があるかを、労働局係官が実地調査および近隣への聞き込みを行うため、時間がかかります。
オンライン化が進み、設立に必要な期間は短縮
タイでは会社設立のオンライン化が進んでおり、設立準備期間は短縮されています。
★オンライン申請ページ ※タイ語のみ
https://www.moc.go.th/th/eservice/item/index/id/3
ステップ1:会社名の予約
ステップ2:基本定款の登記
ステップ5:設立登記
の申請もワンストップで可能なサイトです。
おおよそ
- 事前調査 30日間
- 法的手続 10日間
- 労働許可書審査 60日間
のタイムスケジュールとなります。
タイでの会社設立の利点や欠点などを述べた記事もございます。詳しくはこちら(タイで会社を設立する)
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