チャイナプラスワンの候補先として日本企業の進出も多いベトナム。この記事ではベトナム進出のメリットやリスク、既に進出している日本企業について簡単にご紹介いたします。ベトナム進出の際の参考にしていただければ幸いです。

 

ベトナムへ進出するメリット

近年目覚ましい成長を遂げているベトナムへ進出するメリットとして、「物価の安さ」や「人件費の安さ」が挙げられますが、その他にも以下のようなメリットが挙げられます。

 

  1. 若い購買者、労働者が多い

ベトナムの人口は2020年時点で約9760万人と、東南アジアの中で3番目に多い人口です。その上その平均年齢は約32歳と購買意欲の強い年齢層であることに加え、労働人口(15歳~64歳)比率が約70%と働き盛りも多く、平均年齢と相まって若い労働者が多いのも特徴です。

 

  1. ASEANの物流拠点としてアドバンテージがある

日本からベトナムへ飛行機では約5時間で行き来できる距離でアクセスも良く、ベトナムの海岸線は縦に長く伸びているのでベトナム各港への船舶での輸送が可能です。更に中国、カンボジア、ラオス、タイへと大型トラックが往来できる道路も整備されており、ASEAN諸国への物流の拠点にもなりうる地理となっています。

 

  1. 天然資源が豊富

ベトナムでは鉱物や原油などの鉄鋼資源の埋蔵量が多く、近年関連産業が急成長を遂げています。また、熱帯雨林に位置している為地下水源に伴う水資源や森林資源の他、南シナ海に面していることによる水産資源も豊富です。

 

これらも総じて、マーケットとしての魅力があるという点に集約されます。

 

ベトナムへの進出支援について

ベトナム進出における支援について、「共通投資法」によって定められた投資優遇措置があります。主な投資優遇措置としては、法人税、輸出入関税、土地使用料の減免が挙げられます。

このうちまず法人税の減免について、ベトナムの法人税率は原則22%ですが、一定の条件を満たすことで以下の優遇税率を受けることが出来ます。

ベトナムへの進出支援

引用元:税理士法人山田アンドパートナーズ - ベトナム進出時のポイント② ~外資規制及び投資インセンティブ~

https://www.yamada-partners.gr.jp/news/vietnam-regulation/

更に、特定の事業分野や地域に当該する案件だと、最大9年間もの間50%の減税を受けられる場合もあります。

また、土地使用料の減免について、ベトナムでは全ての土地が国有となっているため、国から土地使用権の付与を受けなければ土地を利用することが出来ません。
この際事業内容及び進出地域に応じた減免を受けることが出来、最大では全期間免除となる場合もあります。

 

ベトナムのFIA(計画投資省海外投資局)が発表したFDI(海外直接投資)に関するデータによると、2021年の認可額(推定値)は前年比+9.2%増の約3兆5500億円となっており、日本は国別で3番目に多く認可されています。
このうち、日本企業に関連する大型案件は、第2オーモン火力発電所案件に約1500億円、大阪市の製紙会社レンゴー株式会社とタイの製紙会社の合弁企業であるビナクラフトペーパー(Vina Kraft Paper)社の製紙工場案件に約700億円の投資が認可されています。

 

その他、国策としてICTの発展を掲げるベトナムではスマートフォンの普及も広く、ベトナムの生産年齢人口の78%がECを利用しているというデータもあります。
事実、ベトナム電子商取引協会(VECOM)の発表によると、EC市場規模は2016年から年平均30%で成長を続けており、2020年の市場規模は約1兆6400億円まで拡大。2025年には約4兆7000億円に達するとまで予測されています。

更に以下のような、日本企業のEC事業での進出も期待されている調査結果もあります。

ECサイトでの日本商品購買意欲

引用元:工業団地インフォ - 【解説】コロナ収束後もベトナム市場は魅力的な投資先か?

https://estate.nikkan.co.jp/column/dazhhwwjbnothf

 

ベトナムに進出している日本企業について

ベトナムに進出している日本の企業数について、北部ハノイ、中部ダナン、南部ホーチミンの3都市にある日本商工会議所に加入している企業の数で捉えることが出来ますが、中には商工会議所に加入していない企業もある為、正確な数としては不明です。
なお、ジェトロが毎年行う日系企業実態調査において、2021年のベトナムの調査対象企業は1883社と、日本商工会議所に加入している企業数とほぼ変わりない数字となっています。

進出している日本企業の中には大企業も多く、産業も製造、製薬、食品、小売、外食等幅広く展開されています。

日本企業によるベトナム進出の特徴と来歴

引用元:ベトナム進出サポーターズ - ベトナム進出の日本企業について

https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/japanese-companies-investment-in-vietnam/

また、先述した日系企業実態調査(2021年)によると、702社からの有効回答の内、2021年の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業の割合は54.3%、2022年の営業利益見通しを「改善」と回答した企業の割合は56.2%と、半数の企業が景気の上向きを回答。
今後1~2年の事業展開の方向性については、55.3%が「拡大」と回答し、国内市場と輸出の売上伸長への期待が高いことが説明されています。

 

ベトナムへ進出するリスク

ベトナムへ進出する際考慮すべきリスクとして、「細かなインフラ整備がまだ途中である事」や、「大気汚染などの環境問題」が挙げられますが、他にも以下のようなリスクが挙げられます。

 

  1. 法令・税務によるリスク

ベトナムでは法令の決定から全域に行き届くまでのラグがある上に、朝令暮改も多く振り回されるという事例が多いようです。
また、「移転価格税制」と「外国契約者税」という税務制度は現地に進出している日本企業もよく指摘される事項として挙げられており、最悪追徴課税が発生してしまうケースもあるようです。

 

  1. 人材にまつわるリスク

ベトナム人は勤勉と言われていますが、日本人とは大きく異なる価値観の為、働き方にも大きな違いがあります。特に離職率は高く、4人に1人は3回以上の転職をしているというデータもあります。
その為労働力は豊富であるものの、中間管理職などの人材が育ちにくく、企業の発展を妨げる一因にもなりかねません。

 

  1. コストにまつわるリスク

ベトナムの人件費は日本よりも安いですが、日本人駐在員のコストは日本での給与の2.5倍程と最終的なコストが寧ろ高くつく場合もあります。
また、ベトナムには2000社近い日本企業が進出しているとはいえ、ベトナム経済が注目され始めたのが2000年代に入ってからと比較的最近の為まだまだ事例としては少なく、前例のない事象によって後々思いがけないコストが発生する可能性もあります。

 

これらのリスクの内、「事例の少なさ」を回避するための案として、まずは近隣国であるタイへの進出を検討してみてはいかがでしょうか?

 

東南アジアへの進出にタイも推奨する理由

ベトナムと同じ東南アジアであるタイは、ベトナムよりも早くに日本企業が進出していることもあり、事例も多く、インフラや法令の整備も進んでいます。

また、BOI(タイ投資委員会)と言うタイ工業省傘下の政府系機関がタイ市場への積極的な外資誘致を行っており、優遇措置も多く用意されているため、特に初めての海外進出において、実績のあるタイを選ぶ日本企業も多いです。

※注釈

タイ投資委員会(BOI)とは、投資政策の策定、投資案件の認可や恩典の付与を担うタイ工業省傘下の投資誘致機関のことです。東京、大阪にもオフィスを設置し、セミナー等を通じて投資家への情報提供や対タイ投資相談を積極的に実施しています。

https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/business/regulations/boi.html

タイ市場およびその将来性についてはこちらの記事にて詳しく解説しておりますので、是非タイでの事業展開もご検討ください。

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